「開発生産性Conference 2025」に参加しました

先日行われた「開発生産性Conference 2025」では、AIとソフトウェア開発の関わりについて、さまざまな企業のエンジニアやリーダーたちが登壇し、自身の取り組みや考えを共有していました。
私は以下のカンファレンスに参加しました。

    • ペアプロ×生成AI:現場での実践と課題について
    • AI時代の開発生産性を加速させるアーキテクチャ設計
    • AIエージェントが変える開発組織のEnabling
    • 品質と速度の両立:生成AI時代の品質アプローチ
    • GitHubが見据える開発の次:AIと人間の共創最前線
    • リアーキテクチャとAI活用で実現する、急成長プロダクトの開発生産性向上
    • AIがもたらす変革:AI開発者体験を向上させ、ビジネス価値を生み出す方法
    • AI選択の落とし穴を避けつつ、API開発の手間を減らす「ゲートウェイ」
    • AI時代のソフトウェア開発を考える

複数の講演を通じて浮かび上がった共通のテーマは、AIがもたらす「生産性向上」と、それに伴う「新たな課題」、そしてAI時代における「真のエンジニアリングの価値」の再認識でした。

この記事では、各セッションを通じて共通に語られていたことに注目して、レポートしてみたいと思います。

劇的な「コーディング」生産性の向上

まず、各講演で共通して語られたのが、AI、特に生成AIエージェントがコード生成や単純な定型作業の速度を大幅に向上させたという事実です。

ある講演では、AIによってソフトウェア開発の「驚くほど速く到達できる70%」の部分、つまり初期段階の機能開発や単純な実装、定型的な処理といった領域において、生産性が劇的に向上したと報告していました。

実際、ある調査では、AIを利用する開発者の88%が「スピード」の向上を実感していると報告されており、「明確な作業はサクサク進む」というポジティブな声も聞かれました。

「最後の30%

しかし、AIがコーディングを高速化する一方で、ある講演者は「人間のエンジニアリング能力(真のエンジニアリング)」が依然として極めて重要であることを強調していました。

AIは、ソフトウェア開発の初期段階、いわゆる「驚くほど速く到達できる70%」の加速には大きく貢献しています。

しかしその一方で、本番環境で安定して動作させるための設計やレビュー、システム全体の整合性の確保といった「最後の30%」にあたる工程、つまり保守性や堅牢性を担保するために欠かせない領域では、いまだにAIによる生産性向上はあまり実感されていないという現状が、講演の中で語られていました。

また、AIによるコード生成の高速化が、技術的負債の急速な積み上げ、レビュー不能なコード量の増加、さらにはセキュリティリスクの顕在化といった、従来のソフトウェアエンジニアリングの課題をより早く表面化させてしまっているということも語っていました。

ボトルネック解消が生産性向上の鍵

これらの議論から共通して浮かび上がってきたのは、ボトルネックが解消されない限り、本当の生産性向上にはつながらないという重要な示唆です。

この考え方は、組織全体の仕事の流れや成果を最大限に良くするために「どこに問題(ボトルネック)があるか」を見つけて、その部分を改善することが大切だとする「制約理論」に通じています。

たとえAIによってコーディング速度が大幅に向上しても、その後のレビュー工程や、複雑な設計を理解するプロセスがボトルネックとなっていれば、全体としての生産性向上はそれ以上期待できず、むしろ、AIがもたらす「速さ」によって、それまで見えにくかったボトルネックが浮き彫りになるケースすらあるそうです。

つまり、AIによる「コーディング」の高速化だけでは解決できないボトルネックを、最終的には「真のエンジニアリング」によって乗り越える必要があるということです。

この強いメッセージは、多くのセッションに共通していました。

AIは効率化を加速させる強力なツールですが、複雑な設計、深いドメイン知識、品質保証、技術的負債の管理、そしてチーム間の連携など、高度な判断と創造性が求められる領域では、人間のエンジニアリング能力が不可欠だと講演者たちは口を揃えて語っていました。

AI時代に求められる開発者スキル

AIの活用により開発者の満足度が向上している反面、「スキルの退化」を懸念する声もあります。

しかしある講演者は「スキルが単純に低下するのではなく、生産性の高い開発者に求められるスキルが、時代とともに変化している」と語っていました。

つまり、AI時代にふさわしいスキルへとアップデートすることが大事だということですね。

さらに、AIは単なる知識の代替ではなく「知識の増幅器」であり、その性能は個人や組織の能力に大きく依存するそうです。

そのため、AIは単なるアウトプット生成ツールとしてではなく、「設計のバディ」「批判的レビュアー」「根負けしない議論相手」として、自分たちの能力を高めるパートナーとしても活用すべきだと語っていました。

まとめ:AIはパートナー

今回のカンファレンスに参加して得られたのは、生成AIの発展により確かに生産性が向上しているものの、従来から課題となっている「真のエンジニアリング」の問題を解決しない限り、すべてをAIに任せるだけでは本当の意味での生産性向上とは言えないという点です。

将来的にはAIのさらなる進化によってこれらのボトルネックが解消される可能性もありますが、現時点ではまだ不確かです。そのため、今後はAIの得意・不得意を的確に見極めつつ、人間とAIがお互いの強みを活かし合うパートナーシップを築きながら開発を進めていくことが重要だと感じました。

**PS.**

「開発生産性Conference 2025」の2日目には、Gene Kimさんが登壇されていました。『The DevOps 逆転だ!』の著者として知られている方で、個人的にもその講演を聴いてみたかったのですが、オンライン参加だったため視聴できず残念でした。

この本は、とある企業が開発と運用のあり方を根本から見直し、DevOpsを実践していく過程を描いたストーリー仕立ての内容となっています。本文でも触れた「制約理論」にも言及されており、非常に読みごたえのある一冊です。ぜひ興味のある方は手に取ってみてください。


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