結合テストの不具合情報から実施できる傾向分析と品質強化策

システム開発では「単体 → 結合 → システム → 受け入れ」とテストレベルが上がるにつれて、発見すべき不具合の種類が明確に変わっていくことが理想です。
しかし実際には、要件定義・設計・実装などさまざまな工程に起因する不具合が結合テストで検出されます。
結合テストは受け入れテスト前の最後の砦であり、単に不具合を修正して終了とせず、不具合の傾向分析 → 工程改善 → 品質強化までを一連で実施することが重要です。
以下では、結合テストの不具合情報からどのような分析ができ、どのような対策につながるのかを説明します。

1. 不具合傾向分析に必要な情報

結合テストの傾向分析には、下記のような粒度のデータが必要です。

■ 基本情報
・検出した機能
・機能分類(画面表示 / 画面機能 / バッチ /  帳票 / API / 外部連携 / 権限 / 例外制御 など)
・不具合内容(具体的な説明)

■ 工程・責任情報
・検出すべき工程(要件定義 / 設計 / 製造 / 単体テスト / 結合テスト)
・製造担当者
・不具合分類(仕様漏れ / 仕様誤り / 設計漏れ / 設計誤り / 設計理解不足 / 製造漏れ / 製造誤り / 性能 / データ不備 / 環境依存 など)

■ 重大度
・重大度(高 / 中 / 低)

2. 不具合の傾向分析(どの観点で集計するか)

ここで大切なのは、不具合件数を見るだけでは不十分であり、偏り(特定領域の弱さ)を明らかにすることです。

■ 機能別の不具合件数
・不具合が特定機能に集中していないか
・該当機能の設計の複雑性、観点漏れを確認

■ 開発担当者別の不具合件数
・一部の担当者に不具合が偏っていないか
・開発者のスキル差・理解不足も検知可能
・スキル支援・レビュー強化の判断材料

■ 機能分類別の偏り(画面、API、バッチなど)
例えば「画面表示の不具合が突出」などは、画面レイアウト、入力チェック、遷移などの観点強化が必要です。

■ 検出すべき工程の集計
・本来単体で検出すべき不具合が結合まで残っているのか
・結合テストで要件・設計起因の不具合が多くないか
「設計」「単体」が多ければ、工程品質の改善ポイントが明確になります。

3. 分析結果から導くべき対策

分析のみでは不十分で、必ず「改善」に結びつけます。

(1) 特定機能で不具合が多発している場合
想定される原因
・機能が複雑でテスト観点が不足
・設計理解不足
・仕様の曖昧さ・変更履歴の複雑化
・コードが読みづらい/属人化

対策
・テスト観点表の作成・更新(画面遷移、入力チェック、APIレスポンスなど)
・単体テストケースの追加
・ソースコードの再レビュー(重点レビュー)

(2)  設計起因の不具合が多い場合
想定される原因
・設計書の曖昧さ/更新不足
・レビュー観点の不足
・要件から設計の落とし込みが不十分

対策
・設計レビュー観点の追加(データ流れ、例外処理など)
・要件〜設計のトレース強化
・設計書のサンプル/テンプレート整備
・複雑機能の設計レビューをペアで実施

(3) 製造漏れ・誤りが多い場合
想定される原因
・コーディング基準未遵守
・ソースコードのレビュー不足
・単体テスト未実施、単体テスト観点漏れ

対策
・単体テストコードの強化(最低限の網羅性確保)
・静的解析ツールの導入
・開発者へのフォローアップ(指摘内容に基づく教育)

(4)  類似不具合が複数発生している場合
対策
・横断テストの追加(似たロジック・同じ画面種別・共通関数)
・共通部品の見直し
・類似パターンをルール化してレビュー観点に反映

(5)  単体で検出すべき不具合が結合まで残っていた場合
対策
・単体テスト項目の見直し
・単体テストの再レビュー
・単体テストで最低限の正常系+主要異常系を必須化

最後に:テスト結果を分析する文化の重要性

結合テストの傾向分析は「不具合件数の集計」ではなく、「どの工程の弱さが露呈したのか」を読み解く行為です。
分析 → 改善 を継続すれば、
・結合テストの不具合が確実に減少
・テスト工数の削減
・手戻り削減(納期遅延の防止)
・受け入れテストでの安心感向上
につながります。

不具合から学ぶ文化が強いチームは、確実に品質が安定します。
少しでもご参考になれば幸いです。

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